皆さんこんにちは、初めまして、石川淳と申します。簡単に自己紹介をさせていただきます。私は血液内科医でございまして、白血病などの診療にたずさわっております。血液のご病気の方は、病気のお子さまから高齢者まで、非常に年齢層が幅広くて、病気の性質としては手術して取ってしまったら治るというのものではなくて、それが比較的というか、治療が非常に長くて、化学療法、例えば急性の白血病で化学療法になったら、1ヶ月かかる治療をまあ5~6回であったりとか、例えば骨髄移植の治療を受けていただきますと、最低でも2~3カ月毎日と、そういうこともあって、一人の患者さんがご家族も含めてですけど、時間、病気と向き合う時間が長いのが特徴かなというふうに思ってまして、その中ではやっぱり、もちろんいいことをやるしかないんですけど、そういったなかで診療をしております。
今日は、患者さんと診療にあたる医師のコミュニケーションの話をとのことで、スライドを作ってきました。
スライドに沿ってという形になるんですけど、ざっくばらにお聞きになりたいことがあればご質問ください。それではよろしくお願いします。
最初に、具体的な話をしてもいいのかなとも思ったので、「医師と患者さんの、コミュニケーション」上での思い違いみたいなことを調べたデータがありましたので、ご紹介したいと思います。 これはNTTコムと京都大学が共同で研究された結果で、ちょっと古いんですけど、平成29(2017)年に調査されています。
※詳細なデータを知りたい方は、最後の頁の「参考文献(1)」を開いてください。
どのような調査をしたかと言いますと、インターネットで1,000人ぐらいの患者さんにアンケートをとっています。直近5年以内に病院等へ通院されたことがある方が対象で、年齢が20歳代から70歳代と男女まんべんなく調査し、医師は104人で、回答者の男女比は男性が多いというようなデータです。
まず、患者さんの回答で横棒グラフの左の方、青と赤のところが質問に対して肯定的に答えています。例えば、自分の健康は自分で管理したいというのは60%ぐらいの方がそういうふうに思われているということですね。病気や薬の状態を積極的に集めたいという方も50%ぐらい。一方で病気の知識、治療方法、お薬の効果、お薬の副作用についての知識をそれほど自信を持っておられるわけではないです。患者さんは健康や治療への関りには前向きですが、病気や薬などの知識はあまり持てていないというような自覚を持っておられるということです。
健康や医療に関する項目に「関わりたいか」どうかということについても調査が行われています。知識は、自分自身が持ってるというのはやっぱり少なくて、治療方法や薬の効果、副作用ということについては自信がないというのがお答えです。
このグラフは、「病気の情報を十分に提供している」と思う医師の割合を見ています。患者さんに病気の情報を十分に提供していると思う医師の割合は、41%~43%ぐらいそう思っていますが、患者さんから見ますと、十分提供されていると感じている方は33%ということです。
「治療方法の情報」については、医師の方の比率がちょっと高くなりまして50%超えて、患者さんの方が34%。やっぱり医師はより提供していると思っているけど、患者さんはちょっと少なめに思うというようなデータです。
「治療方法の選択肢」は、どういう治療を受けられますかということですけど、それを見てみますと、医師の方は、十分提供していると思うのが45%ぐらいで、患者さんの方は30%ぐらい。これもやっぱり医師と患者さんの認識に違いがあるということです。
これが一番問題かもしれません。「診療時間を十分に設けているか」ということですね。医師が診察の時間を十分設けている環境は43%で、患者さんの方は25%。これも実際、診療の時間を十分かけてられるかどうか、それは外来の患者さんと入院中の治療している患者さんで、やっぱり大きく異なりますが、外来の患者さんは日本の外来の治療で言いますと、なかなか外来で30分かけて、お話しすることは難しいことも多いです。
治療の選択のお話がある場合は、やはり実情の患者さんの理解とは別に時間を取ってお話しするのがいいのかなというのが一つです。看護師さんとか、薬剤師さんとか、そういったメディカルの皆さんの力も借りて診療情報を提供するという問題かなというふうに思ったりもします。
これをまとめると、医者から患者への病気や治療法、情報提供に関して、医師と患者側双方に対して情報提供されていると感じる度合いの印象を伺いました。だいたい医師が4~5割の割合で提供していると回答しているのに対して、患者さん側は3割程度と、情報を受け取っている認識が1~2割は低い結果になっています。
薬の効果や副作用など薬関連の情報提供についても同様で、中央広報の情報提供に関しては、医師と患者のあいだに2割近い開きがあって、患者さんにとっては十分に提供されてないというふうに捉えられているようです。
情報提供を阻害されているように、● で、医者はまあまあ持っているけど、患者さんはやっぱり何も持っていないというところで、こういったところを解決するのが課題かなと思います。
十分な対応ができているかどうかという質問では、医師は56%ですが、患者さんの方がやっぱりかなり低い結果になっています。
「説明と同意(インフォームド・コンセント)を十分に実施している」医師は65%、「医師の説明に納得し、治療を受けている」患者さんは39%。まあ、時間が短いことは、医者と患者さんのそれぞれできいた重要な会話であったり、説明の同意の診療者の意識の差は実際ある、というふうな結果になります。
「治療方法の選択」、これは非常に、特に癌の患者さんの治療選択の説明に重要なんですけど、患者さんを保っているということで、いわゆる● があるということなので、現実は大きな課題だというふうに思います。
「質問しやすい雰囲気を心がけている」かどうかということで、医師の方は65%ぐらいですけど、患者さんの方は31%です。しやすい雰囲気というのは、定義するのがなかなか難しいですけどね。まあ、医師も人間ですし、患者さんも人間ですので、ほとんど性格というか、それはお互いあって、そういった中で信頼関係を構築していくわけですけれども、そこは極端な話、ケースバイケースというようなことを感じることも多々あります。
結局ですね、両者の意識の差、質問しやすい雰囲気の醸成、信頼関係、傾向ということで、診察環境の相談のしやすさということでも認識の差があるということになります。信頼関係については医師が42%くらい、患者さんの方が30%ぐらいと低いですね。十分に満足しているというのは、医師の方は40%弱で、患者さんは34%ぐらいということになります。
プロセスを得られるということは、お互いの信頼関係が大事なんですけども、逆に、患者への対応に困っていることを聞きますと、やはり病気というか、病気の認識の違いがやっぱりあるのかなと、あるいは思い込みみたいなところがあって、それはちょっと違うんやろと言う、ちょっと言ってもなかなか伝わらない、そういうこともあるのかなというような感じのデータが出てます。
次はですね、イギリスのお医者さんで、実際の考えがわからないが、● ということで、ネットにありましたので紹介したいと思います。
※詳細を知りたい方は、最後の頁の「参考文献(2)」を開いてください。
コミュニケーションとは、この方々は何を言っているかというと、次のように3つがあるということです。
⑴ 医師中心のコミュニケーション
パターンの一つ目ですけども、田中さんという方が「頭が痛いです。心配なのでCT検査をしてほしいですけど」と訴えています。
割とよくあるパターンです。医師が診察をしてみたところ、CT検査は必要ないことになります。田中さんは「そうですか、わかりました」と言いつつ、内心不安そうに静かに退室します。こういったパターンは、疾患中心の医療に重点を置く医療制度下でよく診られるスタイルです。医師は、診察や検査の医学的な視点のみに集中し、患者さんの感情や、生活への影響など患者の視点を軽視する傾向が強いのが特徴です。
⑵ 顧客中心のコミュニケーション
もう一つは顧客中心のコミュニケーションです。これはですね、「頭が痛いです心配です」、「わかりました。検査しましょう」ということで、患者さんの希望というか、そういったものを基本的に優先してやるということです。患者さんの要求に応える傾向が強くなります。一見、患者さんの希望について、手厚い医療、優しい医師という印象もあるのですが、医学的な情報が軽視され、必要ないのにやってしまい、適切な検査や治療が行われないのであれば、本当にその患者にとって優しいかどうかというのが違うということです。
⑶ 患者中心のコミュニケーション
これは、まあおそらくそうだという想定で例を挙げられています。患者が「頭が痛く心配なのでCT検査はしてほしい」と、医者は「なるほど、何か心配なこともあるんですか」と。「頭痛が2~3日続いているが、数年前に父が急な頭痛で始まった脳出血で亡くなったので検査してほしい」という患者の心配がわかり、一緒に方針を考える。幸いにも現時点での脳出血の可能性は極めて低く、風邪の頭痛の可能性が高いという医学的な判断で、医師は理由を説明しています。その上で念のため選択肢としてCTをやるかどうかというようなことを相談する。CT検査をすれば、被爆のリスクは当然あるかもしれないということで相談を進める。
こういったことが、患者さんとのコミュニケーションとしては,いいのかなというような視点で、語っていきます。
最後に、市立岸和田市病院の看護師さんである伊賀規子さんが、患者さん向けに「医師との上手なコミュニケーションの取り方」ということで報告されていますので、ご紹介したいと思います。
※具体的な内容を知りたい方は、最後の頁の「参考文献(3)」を開いてください。
患者さんは、医師と協力者パートナーです。私自身も実際、医療の現場で患者さんを治療させていただくときに感じていることです。やっぱり病気を良くしたり、良くなっていただいたり、それは私たちも患者さんも目的は一緒なんですね。そこは、例えば看護師さんも一緒だということで、チーム医療とか言われますけども、基本的にそういう意識というのは、すでにあたり前になってます。ですから、患者さんの側から言うと、ここに書かれてますけど、医療者任せにしない。やっぱりきっちり理解していただいて、そして病気に向かうということが非常に大切なのかなというふうに思います。
パートナーシップを築くコツ
[自分のことを「伝える」意識]です。
これは患者さんの立場で言いますと、もちろん僕は立場に立ってないからわからないことが当然あるんですけど、「何が、どういう症状があって、それがいつからであって、それで何が困っているか」、というようなことをおっしゃっていただくというのは、非常にいろんなポイントを考える上で重要です。よく経験するのは、入院している患者さんの場合ですけれども、医者には言わずに、例えば看護師さんであったり、あるいはリハビリをしておられる方などに言います。医者はどうしても診察が短い、ちょっと短めになるんですけど。看護師さんだと、そこを担当しますと、話しやすいというか、職種によって話しやすいということです。それも大事なことで、必ず必死に考えないとダメだというわけではなくて、● になっていただくことも非常に大事ですね。
「わからないことは聞いていただく」
聞いていただくのは非常に助かるんです。ただ、同じ内容の質問を違った角度から、同じことを違った面から聞かれるということもあって、それは医師の立場で言うと、少しロスしてるんですね。そういったところの少し簡潔になるなということをお話しいただくのは助かります。これはお互い人間ですので、感情を使ってたり、お付き合いですね。
「言わないと分からないことを、医者はわかっているだろうは禁物」
これは割とよくあるんですね。何かといいますと、なんでも知ってはるんちゃうかなというようなことで、今は、知識という意味で言うと、ネットを引けば何でも出てきますので、あれはどうやったかなと、僕もすぐ本で調べたりすることもありますけど、知識という意味では、確かに忘れたり、知らなかったりで調べられるようになっていますが、僕自身も万能ではないので、いろいろなことを全部わかってるというわけではない。ですから、何が分からないのかということを言っていただくと、それにヒントを得て気づくこともやっぱり高かったんです。忘れることも当然です。これから、「伝える力」は自分自身で勉強します。
これはちょっと先ほど申し上げた点ですね。患者さん自身の症状の変化を、すごく的確に、お話しいただける方もいらっしゃいます。そういうのは非常に助かります。それはどういうことかと言いますと、やっている治療が正しい方向を向いているかどうかという判断ですね。もちろん、血液検査のデータであったり、検査であったり、患者さんが日々感じておられる症状とか、今どっちに向かっているのか、良い方に向かっているのか、悪い方に向かっているのか、あるいは両方変わらないのか、そういった情報を正しく表現していただくことは、非常に助かります。そういうことで「いつから/どんなふうに困っているか」、お伝えいただくと助かります。
それともう一つは、これは患者さんは当然日々の生活を送っておられますので、「困っていること、気持ち」とか、そういったこともお知らせいただくと、治療自身が病気だけじゃなくて、患者さんの周りの社会環境にどういう影響を及ぼしているかというようなことも、治療の選択の一つになることもあるかもしれませんので、お伝えいただきますと助かります。
これはよく言われますね。実際、患者さんが「質問リスト」を持ってこられて聞いていただく方、これはもういいことだと思います。それから、日記ですね。よく血圧手帳、例えばそれ以外にも、薬の治療を書かれている方で、副作用があるという変化を来院のたびに持ってこられる方もいらっしゃる。そういうのは助かりますね。
それと、ご自身でそういったことを医師に伝えるのが少し難しいとお考えになられる方は、「ご家族や友人などに手伝っていただく」ことも大事だと思います。これは「具体的にはどういう意味だということをもう一回聞いていただいた方がいい」ですね。医師の説明のわからない時に、「看護師さんに相談する方法もあります」
これはよくあるんですけど、「先生にお任せします」と。確かにですね、病気のことであったり、その治療法の結果がどうかというものを、一人の患者さんがどこに選択をするのかということを考えた場合に、患者さんにとっては、その治療の選択というのは一つしかないですよね。AとBがあって、両方やるわけにはいかない。それを選択していくには正直難しい。ただ、その「お任せします」というわけで、お分かりになったということになるんですが、その提案したものが、どういうことが起こるかもしれないみたいなことを理解していただきたい。
ご自身のご希望は、言っていただいた方が治療選択の決定により役立つというふうに思います。これは、その場ですぐに決めないこともあるのは事実です。どういった治療をするか、この疾患が、病状があまり良くなくて、できるだけ早く治療しないといけない。それは当然ありますので、これはもうケースばいケースですね。可能であれば、やっぱり「納得して決めて」いただきたい。これは医師の側もその提供した治療を納得していただきたいという思いは常にありますので、非常に大事だと思います。あえてお互いにお願いします、と思っていただければというふうに思います。
それからですね、看護師さん、薬剤師など、他の医療者に聞いていただくのも役に立つと思います。看護師さんは、非常に経験豊富な方もいらっしゃって、僕たち医師に、的確にやられていることをお伝えいただける場合が非常に多いです。大変助かります。逆に、医師の方も、看護師さんを頼りにしているというか、看護師さんから聞いていただいた方が、患者さんも、素直によりよく自分の気持ちを伝えていただくようなこともあって、それは非常にいいことかなと思います。
相談相手が見つからない場合は、自分の病院か、近隣のがん診療連携拠点病院にある「がん相談支援センター」にご相談いただくことも可能ではないでしょうか。
患者さんと医師(医療者)とが一緒の協力者となっていることで、決して情報を持たない、医療の情報、診療の情報、ご自身の患者さんも多いでしょうと、そういったものを合法的に考えて、診療していくというのが、パートナーシップになるのかなというような感じでやっております。
参考文献
1.「医師と患者のコミュニケーションに関する調査」
https://research.nttcoms.com/database/data/002097/
NTTコムリサーチと京都大学大学院による共同企画調査
プレス・リリース2018年3月14日
2.「英国のお医者さん」The Asahi Shimbun GLOBE+
更新日:2020.07.21 公開日:2020.07.21
「他者の考えはわからない」から始める医師と患者のコミュニケーション.
https://globe.asahi.com/article/13561634
3.病気を医療者任せにしない「医師との上手なコミュニケーションの取り方」
市立岸和田市民病院 緩和ケアセンター
看護師 伊賀規子
https://www.kishiwada-hospital.com/wp-content/uploads/2025/05/how-to-communicate-with-dr.pdf