皆さんこんにちは。昨年秋のシンポジウムのときに喋ったのとほとんど内容が同じになりますが、ちょっと中身変えて行きたいなと思います。
まず、名前はH. S.と申します。潮岬が郷土です。全く知らない、この人(写真略)から名前をいただいたそうです。この人は和歌山県が生んだ素晴らしい方で、昭和20年8月15日の第二次世界大戦の時に玉音放送をプロデュースした方です。当時の情報大臣、朝日新聞社社長、拓殖大学の学長とか、もう諸々のことなさってますけど、父親はこういう偉い人になるようにと名前をつけてくれました。戦争でやはり両親商家やっておりましたので、大変苦労しましたけど、私はその親のもとで貧しいながらも戦後の大阪生まれ大阪育ち。
仕事はK(上場企業)という会社で、40年近く安全防災が私の仕事で、60歳で定年を迎えまして、もとの会社は非常にありがたい会社でして、だいたい65~70歳まで勤めてます。そのあとやり過ぎですけど、そのあたりが病気の元なんですけど、厚生労働省にも乞われまして、3年間働かせてもらったり、コンサル活動ですね、それから講師とかやりまして、70歳に近づくにしたがって、ますます仕事が忙しくなる、そういうことをやって来ました。20215年末に発症しまして2016年に手術を受けました。趣味は走ること、マラソンとフナ釣り、あとで写真も出しますけど、そういう男でございます。
本論に入ります前に、今日まで京都の国際会館で日本臨床腫瘍学会がやってますけど、そこで患者とか家族が参加していいよという集会がありました。ちょっと感じたことだけ、ご報告します。
皆さんご存知のように本庶先生のノーベル賞受賞で、去年はやはり免疫チェックポイント阻害剤、いわゆるオプジーボを中心にですね、ニボルマブ、これらがもう華やかに出とったんですけど、今年はちょっとトーンダウンしてます。やっぱり副作用の問題であるとか、効果が思ったほどでないと、去年からすでに言われとったんですけど、だいたい18%くらい、2割弱です。今年あたりそれが非常に強調されてました。
それから、もうひとつが個別化医療ですね。それからゲノム医療ということで、遺伝子ですけど、これが今年のキーワードとなってます。先生方が言われるのは、こういういろんな言葉が飛び交っても、要は患者の我々にいかに自分に合って使えるか、有効な治療薬を見つけ出せるか、これが課題です。ゲノム解析解析という、私も受けましたけれど、コンパニオン検査ということで、要は治療薬を使えるかどうか、プラス陽性で使えるというような・・・先生方おっしゃっていたのは、皆さん方も現に「がん」と闘病されている方に、初期段階で早く受けてですね、治療薬を選んでいくのが大事だと。例えば、私の場合だと、キイトルーダが保険収載されましたんで、すぐしましたけども結果はマイナス。使えない。でもやっぱり色々やってみる必要はある。
それからもう1つは、これもやりましたけど、プロファイリング検査いうことで、要は標準治療終了者、保険で大体できる治療が終わった人、ちょっとやそこらではなかなか治らないというか、抗がん剤もファースト、セカンドも行ったというふうな感じの人が対象になるということです。ちょっとこれやっぱり費用高い、安いので25万円、高いので100万円近くになります。
ただこれ受けてもね、変異が出てきます。有効な治療薬に辿り着く人はまだ10%あるかないか、そんな状態。だから私もやったけどもこれ、結果はブー。昨日喋っておられたのは肺癌の先生だったんですけど、肺癌の治療薬なんかは、新たに次から次と出てきております。だからそれらのがん腫が違っても、他のがんに適応される。だから、そこに我々厳しい膵癌であったとしてもね、望みをかけていけるかな~と思います。世の中のスピードは猛烈な勢いです。日本国だけじゃありません、世界中でやってますから。だからやっぱり皆さん、1日1分1秒でも生き延びんと、これはいかんという感じがしております。ちょっとご参考までに。
それでは、今日3つですね、病気になって知ったこと、学んだこと、思ったこと、この3つをざーっと行きたいと思います。
まず自分がなぜ膵癌になったかいうことですけど。
2015年12月、家内と定年後、毎年堺市の人間ドッグ行ってました。「そこで下村さん脾臓近くに嚢胞がありますよ」と言われました。どきっと、まずぎくっとしましたけども。いままでコレステロールが高いとか、そういう所見はありましたけど、こんなん初めて。で、正月絡んでましたので、ちょっとやばいなーと思って、インターネットたたいて。脾臓の嚢胞というても、膵臓癌の可能性はあるというのはちらっとキャッチしておりました。で、翌月ようやく中堅病院でCTしまして、精密検査したところ、とたんに、先生曰く、「膵臓やな」という言葉を吐きはりましたね。これが「どひゃー」という感じで、やばいなーと。で、その次の27日また同じ先生(内科医の先生)の予約を取ったところ、講習している私の出先に、1日遅れで「外科医にかわりますよ」と連絡が入りました。これで決定的です。「うわーやばい、こらあ覚悟」という感じで直感しました。28日に行きますと、先生の真剣な顔ね、看護師さんも真剣な顔。こっちはあまり真剣な顔でなくて、ふいっと入ったら、「下村さん、あの膵臓の膵尾部に2cmのがんがありますよ」と。どかーんという感じ。大ショックです。すぐに「より精密な検査をお薦めします」と。で、そのときにうちの病院でと言われたんですけど、先程言いました、なんぞあったらということで、大阪府の急性期の先生のとこに頼ることにしました。
もうそれ聞かされたときですね、皆さんと一緒と思います。「なんで自分が?もうすぐ死ぬのかな?あかんかな?」。膵臓癌ですから。私ぶっちゃけた話、企業の中の従業員や近所のおじさんおばさん達で、膵臓癌で生き残っている人というのは、ほとんど知らない。そういうこともありましたんで、もうあかんかな?という気がしました。ちょうど今日も車乗って来てますけど、新車買ったばっかり。まだ1か月も経ってない。この車これから誰が乗るのか?とか、もう大ショックですよね。だから家内に会うまで「落ち着け、落ち着け」と思いながら帰ったなと思います。だからこのときが一番、皆さん大変だなと思います。この段階が。
発症のことをつらつら考えておりますと、なんだろう、先程もちょっと触れましたけど、70歳に近づくにつれて仕事量が増加した。それは何というか、どちらかといえば、家内にも叱られた。「お父ちゃんあんたはNOと言えへん人や!」と。「できません」と言うべきところ、会長に「発表するか?」と言われたら、「来年の7月まで生きとるかどうか、ちょっと分かりませんから、ちょっとできません。」と言わなあかんのに、なかなかそういうこと言えず、「はい!」とすぐ言ってしまう、こういう性格です。
それからもうひとつが、地域活動。いわゆる皆さん方も自分の地域で町会というのがあるかと思うんですけど、そういう「役員やってくれるか?」、「はい」と言ってしまいまして、もう土日に行事が多い、とかいう形で。もうそしたら休む暇がありません。
それからもうひとつは、長年の「付き合い」。昨日も久しぶりに行って来たんですけど、60歳以降も定年以降も過食気味。ちょっとよろしくない。それからもう1つは運動量の減少ですね。定年後ですね、朝のラジオ体操してません。ジョグというかマラソンのための練習も減って来てですね、どんどんマイナス。それから直近の負荷、仕事の急な負荷、阪大工学部長から「下村さん、安全教えてあげてくれるか?」、「いいですよー」、またこれもNOと言わない性格で。学部長から「講師ですけども、謝金少ないけど、定年ないからやってみる?」って。「いいですよ」。それで、3回生教えるために2か月分ですけど、ほぼ毎週2時3時くらいまでかかって資料作り。いいのができあがったんですけど、結局1年でパーです。
そういうことがあった。いわゆる60歳までは胸腺が残っていて免疫があるけど、もう今ではなくなった。あとは腸だけの免疫力なのに、ますますこういう状態なので、もう免疫力が追いつかない。だから「がん」が出て来て、免疫と拮抗する中で、やられたかなという気がしております。
変調はどうだったの?というと、あとから思いますと、実は、10月くらいここ(胸元)に痛みがあったんです。今まで感じたことのないような痛み。で、大正製薬、胃腸薬を飲んで、漢方の胃腸薬もあんまり治らないな。医者行かなあかなかったんですけど、もうすぐ人間ドッグあるね、っていうような形で、ちょっと抑えてた。それもちょいとまずいかな。
どんなの?いうたらそのお腹と、それから便です。皆さん方、消化管はやっぱり便ですね。もう立派なのが出なかったり、私の場合この半年くらい粉みたい粉状。そんなような便になってた。だからそこはおかしいと思わないと。そのへんがやっぱり忙しさにかまけて。で、もうすべての検査いたしました。造影から始まりましてMRIまで。入院もしてERPもやりました。結果はステージ4ということで、内科医の先生から「ただし、手術はできるよ」と言われましたのでチャレンジしました。
手術で知ったことですけど、膵体と膵尾部、私はしっぽの先だったから、もうあの先端だけかな思ったら、やっぱり55%くらい取られまして、脾臓も取る、左副腎も切除する、それから脾臓動脈続くところの血管全部、胃壁の郭清、リンパ節、全部取ると。6時間、だから標準的と言えば標準的。入院は22日ですけど。先生から最初言われたのは「10%の命を取りに行く手術。」あんまり意味がよう分からんかった。患者としてはもう手術が終わったらほっとしてしまう。退院のときには、先生指3本立ててくれまして、「下村さん、良かったね」、「先生何?3つ約束するんか?」、「違う違う、お前さんのステージは3やったんだぞ、病理検査の結果」。ラッキーという感じがしましたけど。このあたりがまずいんですね、なんか自分としては手術終わったら治ったん違うかみたいなね。違うんです。これを忘れとる、再発転移。2年以内に膵癌は基本的に襲ってくる。だからここの段階で、再発したあと、はよ手をうっておったら進行がもっと食い止められたな、そういう反省はあります。
術後は、S-1ですけど、5クール約8月間利用しました。で、体調的には食欲不振以外、あるいは両指と爪割れ若干ありましたけど、一番は骨髄抑制、これは目に見えませんけど。だけども皆さんが言うほどむちゃくちゃ苦しむことはなくですね、終えられたかなという感じ。
先生も「もう8か月やって、これ以上やってもあまり効果がみられない」ということで、3か月ごとのCTに変わって行きました。それでもやはり1年8か月後に肺へ。2017年12月、右肺のS8というところに見つかりました。最初1個でしたけど、その月末にはもう2個になってました。原発の肺癌かな思うて、「3か月もうちょっと見ようね」と。
まあそのあたりが患者の気持ちと医者のずれのところがあるんですけど。もう待ちましたら4か所に増えて、何って言いますかね、皆さん、雨後の竹の子みたいににょきにょきと「がん」が見つかる。これではいかんということで標準治療ですけど、10か月間、ナブパクリタキセルとジェム、アブラキサンをやりました。そしたら最初の2か月で効果が現われまして、小さくなりました。4つあったのが1つ消えてですね、あとが縮小という傾向、8月までは横ばいのままでした。
ところがやっぱりメーカーの薬のレジメン通り、6か月目あたりからちょっと厳しくなって来た。60%投与と落とした分もあるんですけど。春3月20日スタートして、10月11月くらいには、もうそろりそろりと薬剤耐性が出て、効かなくなって。これがいやらしいところですね。
転移後ちょっと、お医者さんに渡した私自身のそういうデータを私にポンと返してくれる先生もいますので、それを見たら、これが分かりました。お前さんのがんは悪性で、転移性の腺癌、分化度は中分化。分化度というのは未分化・低分化・中分化・高分化っていう4段階分かれておりまして、細胞の分裂の分化の度合いをいいます。未分化の方がちょっといやらしい、進行が速い。高分化の方が遅い。ただし、未分化の方が抗がん剤などは効きやすいと。ちょっとそうした相反したものがある。それからお前さんの「がん」は浸潤性でスキルス。いわゆるおのれの細胞がんは鎧を着て、防御して抗がん剤受け付けないような、いやらしい癌だ。それから忘れてた、これが一番大事。リンパ節の一つに、近くに直接浸潤してた。ということは、身体中に血液の中に癌の幹細胞が、それが生き残ってる形です。だからちょっと冒頭言いましたけど、転移するということを忘れるというのはいかんなーと。
1年8か月、仕事量落としてましたけど、もとの手術の後の生活に戻って、同じことしてますからね。食事など、そのあたりがちょっとまずかったなという気がします。だからまあ皆さん方も、まだ私みたいに転移してない方は、手術終わった後だけの方は、どうかちょっとその次のことも考えて、治療手段ということを色々と考えないとね。
次に学んだことですね。これはもう悔しいけど、遅いけれども、転移後が大半です。
皆さんやっぱり「がん」は情報戦です。だから、ここに来られる方や前向きな方はこういう患者会とかで、キャッチアップしたい。これが大事です。まずはスタートしたのは、膵癌の知識、病院のパンフレットから、主治医の先生とのやりとり。主治医の先生とやりとりするために、こっちも医療知識というか、喋れるくらいもっていかないといけない。一番大事なのはコミュニケーションですね。
それからあと本、講演会、それからネット情報、患者会。こういうところを、それぞれお話します。
で、いちばん最初はこのパンフ(省略)からスタートしました。これがスタートです。基本中の基本。これから窓口ですね。病院の窓口からどんどん情報を辿って行くのが大事かなと思います。大病院は予約入れてますけどそれでも、待つのが長い。肝胆膵の先生方は忙しくて、下手すると1時間くらい待って、話は「はい、5分で終わり」というような場合もあります。それから先生方、入力せなあかんから、どっちかいうたら患者の顔を見ないでパソコン見てやられたりして、コミュニケーションありませんから。その中でどうして自分の病状ね、これからやっていく方針や治療の中身の話。医療用語や分からんところや疑問点をどんどん聞く。ぼろぼろになりましたけど、私はノートを持って、先生方の話をひかえるということをやりました。
いま代わられたんですけど、私の執刀医ですけど、〇〇先生という、素晴らしい先生なんですけど、いちばん嬉しかったのは、だんだんとコミュニケーションが良くなったこと。1年2年なって来ますとコミュニケーションが取れるようになりました。大阪の地震のとき、「下村さん~」と言うので聞いたら、スホマで見たら家の中がちゃがちゃやねん。スマホ画面見してくれて、「大変やったなあ。応援に行かなあかんかったな」って感じで、笑い話になるんですけど、やっぱりなんだかんだ先生も生きてる人間ですから、くそ忙しい中で、次から次から患者さんが来るわけですけど。そんな中でやはり、目に留まる患者じゃないですけど。私も最初はなかなかその先生との関係は・・・。でもやっぱり人間、信頼関係、人と人ですから、よく言われるんですけど、わしの先生なかなか言うこと聞いてくれへんとか、色々あるかと思いますけど、結局上司と部下の関係と一緒。上司と親は選べません。我々患者も、医者というのは、選ぼう思ったら選べるかも。でもやっぱりそんな中でいかにコミュニケーションをとるか。どうしてもあかんときもある。
それから書籍ですけども、大体臨床の標準治療の先生方は本をほとんど出しません。もうガイドラインとかに従う。そうすると、自分がクリニック開いてるとか、自分が得意的なやついろいろやってる、そんな本が圧倒的に多いです。
だからこの中でも皆さん方、自分にとってほんとに何がいいのか、そういうものを選んでいただきたいな。よく言われる近藤先生などの文では、「がん治療はもう何もせん方がいい」っていうような先生もいる。ほんまかという・・・。すべてがおっしゃってるのが間違いとは思いませんし、すべてが合ってるとも。それぞれの方々の考え方です。そういうことを思って参考にする。
それから公開講座は、だいたい関西地区でやっているなーというのは、行くことにしています。この1・3・5会の会長にこの会でお会いできたのも、実は20218年2月の大阪国際交流センターの講座があったからです。そこで別室のところにチラシが展示されてまして、大阪国際がんセンターがあるんだと。だからまあ、それぞれいろんな先生が来て話されますけど、最新の話もやっぱり多いですから。わざわざ梅田まで出なあかんとかあるかと思いますけど、なるべく皆さん方出られたらどうですか。結構集まりますと、このメンバーが大阪城とか近辺から集まりますから何百人とか集まりますので、仲間が見つかります。それから昨日などは特にそうでした。
ひとつだけちょっと言うときますと、腫瘍学会でですね、こういうところでお医者さんがどんどん一方的に喋られますね、そのあと質問タイムがある。大体このおっちゃん(私)質問するのが大好きですので、膵癌でこれこれというゲノムとの関連で質問した。休憩時間帯その先生が終わったあと、兵庫県の娘さんが来られて「母親が膵癌です、手術できません」、前のおばちゃんは「私も膵癌です」、すっとそこで3人の輪ができるわけです。現状とか病状がぱぱと確認できますし、だからやっぱり皆さん出会いというか、そんな中でね、仲間がいますので、ぜひ出られた方がいいかなと。
次がネットです。ネットは皆さんご存知のように、もう情報はめちゃくちゃでございます。扉をたけば入口を開いて「いらっしゃい」というようなものもあります。自分に正しい情報を探し出してください。
公的機関病院関係はエビデンスの基本のしっかりしたもの、民間クリニックはやっぱり宣伝情報です。もちろんこの中にも、力のある、全然効かないというものではないものもありますけど。それから、「必ずあなたのがん治ります」ってのは、これはちょっと信じがたいですね。
それからもうひとつ言われたのは、いろんな「がん」でも治る人は必ずいます。治る人はゼロじゃない。例えば膵癌でも。そうすると体験談でバーンと載る場合ありますけど、それも皆さんがた普通考えたら、自分に置き換えたら、うわぁ治るんだと思いますけど、そんな甘いもんじゃないという、そこもちょっと知っておいていただきたい。だから、そういう「治った治った」という方の文もちょっとやっぱり・・・・。
それからあとは、患者さん自身がね、載せてる場合があります。そういうブログがあったりしますから。そういうところは、意外と参考になる。それからずーっとパソコンをたたいてみると、もう、がんに関する記事というのはボコボコ出て来ます。で、スマホなんか持ってる人なんかは、自分の膵癌に関わる情報を毎日拾ってはるような人もいますけど。そういう中でね、「あら?」、「はっ」、「あれっ」と気づく、中身が光るものを大事にしていただきたい。自分に合うもの、見つけ出していただけたらなと。
それから患者会ですけれども、あなたはなぜあの急性期というか総合医療センターへ行かなかったか、やっぱりなんかちょっと、その自分の病院というかメイン治療病院に行くの、ちょっとなんか引けた。ところが、がんセンターでやってるいうたら、行ってみようかなとすっと思います。どこ行ってもいいかなと思います。
で私はこの「1・3・5会」毎回参加させていただいて、こちらの先生の話、抗がん剤、放射線、緩和ケア、最近のがん治療、全部聞かせてもらいました。いわゆる最先端の話を聞かせてもらいました。質問もできます。それから、膵癌患者グループの情報交換、いつもやっております。そしたら、その方々と「今どうやねん」という形で進行状況や治療の中身がやっぱり読めて来ますんで、大事かなと。
それから、このセンターで膵癌教室やっております。そういうのに参加しております。こういうところに参加するというのは、生の情報が入って来るということです。そんな中で知ったのが、もういやなことですけど、膵癌の「こわさ」ですね。3,400分の1です。3,400人に1人が膵癌になる。宝くじなんか、いっこもあたらへんのに、「なんで3,400人に1人で、こんなん当たんねや」と思って。で2016年には肺癌、大腸癌が多いんですけど、膵がんの人が31,000人の方が亡くなっている。ただ、先ほど会長も言われたように、膵がんは罹患者数と死亡者数がニアリーイコール、本当にうっとうしい「がん」、治りにくいということ。
ほとんど膵癌というのは膵管ですね、インスリンとか出します。その膵管の上皮性の細胞に発生します。間質という細胞間を支える組織、間質性肺炎の間質とはちょっと違う、そこが線維化するというのが他のがんと違う。だからもう、鎧を付けた「がん」です。抗がん剤が到達しにくい。神経周囲に浸潤、リンパ節に高頻度に。で、転移がもうどんどんいたします。なんでやといえば、この足が速いのは、膵臓がん。皆さん考えてみてください。胃とか大腸とかはまだ組織があるんですけど、膵臓というのは筋膜がない。ほぼ裸に近い。防波堤がない。だから、そこでできた腫瘍はすぐご近所に浸潤していく。手を広げていきよる。消化管、重要な動脈にまきついていっちゃう。私のような進行がんになりますと、言いましたように、血液中に「がん」がまわって、循環しております。高速で循環しております。全身病になる。いまのところ肺に6つですけど、どうなってるか分かりません。だからもう他にね、転移しないことを祈っています。知れば知るほど、肺癌の方がいいとか、乳癌の方がいいとか、子宮頸癌の方がいいとか、大腸癌の方がいいとは言いませんけど、「なんで膵癌か」とどっかちょっと引っかかる。
最後ですね、ここからは思ったことをお話します。
実のところ、私にはありがたーいことに、守っていただく5人の先生がいます。メインが大阪急性期総合医療センターです。この近くになりますけども、自由診療・自費診療になりますが、大阪がん化学免疫療法センター。それから患者会とか膵癌教室で大阪国際がんセンター、また放射線治療についてはこちらで相談させてもらってます。もうひとつがですね、いわゆる標準治療がなかなか治らなかったら大病院の場合は、「うちではこれ以上することはありません」という場合、頼って行けるところ、京都のあの烏丸御池に和田先生という方がおられます。で、ちょっと学説違いますから、この先生方みんな仲良しこよしというわけではありませんけどもそれぞれの立場からサポートしていただいています。この先生は食事療法とか生活習慣とか、そちらの問題です。それから家の近所のかかりつけの先生などは標準治療では「ビタミンCなんか、あんなんやっても「がん」に何の役にも立たん。エビデンスがない」とか言われますけど、私は毎週やっております。今日もやって来ました。それから最後は口腔ですね。歯が生えるかどうかというのが、炎症が起こってるか、CRP値、血液で分かるわけですけども。そういうところは、生きて行くいちばん最低限のところです。この歯医者さんも「下村さん、歯だけは任せてください。バックアップします」と。ありがたーいことに、大体こう沢山先生がおられると、それで安心します。これがものすごい安心かな。本音のところは「ちょっとすぐには死なないぞ。」かも分かりません。
なんでこういうの探ってきたん?いうことなんですけど、もともと私の知ってる先生は、大腸癌の先生ですから、肝胆膵の先生に診ていただいた。で、ここの先生どちらかといえば阪大系ですので、普通大病院はこういうあの自由診療とかエビデンスがないのは、「いやー」っていう場合が多いんですけど、一応は「責任はうち持てませんよ」と言いながら紹介状とか書いてくれる。そういう良さはある。こちらは関東の堀先生のところに行って、いわゆる治療法を聞いたときに、こんな立派な先生がおられるいうことで門たたきました。
治療経過ですけども、一番は小康状態ですね、手術が終わった後、抗がん剤投与です。2017年の年末にCTして来ましたが、このあたりが大事だったかな思います。厳密には2018年(去年)からですね、ありとあらゆることやっております。エビデンスがあると言われる標準治療、外科療法、放射線療法、化学療法。それ以外に、エビデンスがないものですけど複合免疫療法とか。しかも自費で非常に高額です。だからここのあたりが、効かなかったらもったいない、損したとかいうか、やっぱり、どう考えるかですけど。そこは自己責任になります。あと補完療法になります。温熱、8週間8回は標準治療で保険適応あります。それからビタミン、サプリメント、ちょっと高額なものもあります。あとはもうこのあたりからは自分でできる、運動、食事、漢方薬、ちょっとそういうようなところ。で、化学療法で最後残ってたFOLFILINOXですけど。標準治療で、急性期の先生から「下村さん最後これやけども」、「これはちょっと先生勘弁してください」、ということで、ペンディングにしております。
で、がんになって思うことですけど、常に言うんですけど、皆さん、がんになると、最初落ち込みますけども、死ではありません、すぐ死ぬことはありません。そんなに、がんになったら明日死ぬんかいうたら、絶対死にませんから。最初がん細胞のちいこいやつが、どんどこどんどこ10の6乗、8乗とどんどん増えていく。それが全身に増えていく。負けるというか分岐点が大事かなと思います。そこまでは負けてはならん。皆さん、何があっても頑張ってください。で、がんほど賢い手ごわいと言いますか、もう本当によいど根性してます。がんは。ありとあらゆる手段を使って考えてるんかなと思います。で、無制限に増殖します。普通の細胞はこれで終わり、ぴっと止まるのに。どんどんどんどん増える。血管を新たに自分で作るらしい。栄養を正常細胞より自分の方に取り込む。だから「あまり食べすぎず」とかいうのは、どんどん食べると栄養は「がん」も元気にしてしまう。それから変装しております。私はがんじゃない、ぱっと変装して知らんぷりしてる。それから、抗がん剤が効かないように、細胞に薬が入って来ても、すぐ排出する。そんな力をもっています。そして、自分は炎症を起こさせ、炎症を起こしてどんどんどんどんと、自分の活動を活性化させる。で、抗がん剤で子分の癌細胞たたかれたとしても、親分の幹細胞はなかなか死なないと。親分いつも隠れてますから。そいつが生き残って、また子分をつくると。その中で遺伝子変異というの、自分の都合のいい方にいい方に変えていきよって。ほんとに賢い。アポトーシスしない。不死化する。いやらしい、賢いやつです。だけども、いちばん賢くないのは、本体が、私が亡くなったら私のがんも一緒に「ほなさいなら」となくなっちゃう。それを知らないのは、ちょっと賢くない。それがいちばん賢くない。
それからもうひとつはがん種で病名は同じ膵癌です膵癌ですって言うても、結局個人病なんです。で、ひとりひとり顔が違う、形が違う。それから旧の抗がん剤は、まあ、延命か縮命かいうことですけど。学会でも言われますけど、5段階あります。0から4でしたかね、要は身体が元気な人には抗がん剤はよく効きますけど、身体が弱っていて、ちょっと難しい、そういう方に抗がん剤をやりますと、効かないし副作用も強くなる。そういう悔しさ、しんどさがあります。だから、抗がん剤の選び方、いろいろガイドラインにありますけど、それから、いつやめるのとか、その判断、大事かなと思います。それはやっぱり患者ひとりひとりで違う。
それから「がん」になって思ったのは、今までほんとにたくさん従業員の方見送ったりしましたけど、同じポジションのところで、50代半ばでした。その方は胃癌でしたけど、腫瘍が血管の側で手術できない。で、毎年きっちりヘリコバクターのピロリ菌の関係もあって、チェックしてたのに、進行してました。で、病室のお見舞い、亡くなる1か月前でしたかな、旧の森之宮でしたけど、成人病センターでした。その先輩の顔を最後忘れられない。「よー来てくれた、ありがとうありがとう」。だからやっぱりなんかこう、がんになる人は優しい人が多すぎるかな。だから、がんになられる人がみんな強力な人、こわい人というわけじゃない。
それから先程も言いましたけど、自分ががんになったらどうですか?ちょっとだけ質問してみましょう。
周りに「はい、私膵癌です!」って言ってる方はどのくらいいらっしゃいますか?どちらかというと言いたくない人どのくらいいますか?ありがとうございます。で、そこなんですけども、辛いところあるんですけど、実は話をすると、結構周りに何も膵癌だけでなく癌仲間・癌友がいますので、やっぱり共有するのがいいなと思います。まあここは一応皆さんのご判断。8番も言いました。
それから標準治療。三大治療基本ですし、それはもうしっかりとやらなければなりません。ただ、それだけではやはり進行する場合もある。その中でちょっと気づいたんですけど、最初、膵癌は肺転移した場合、放射線治療はできない、もうダメ、無理無理と言われたんですけど、実は3個までなら可能。ここのセンターの先生にお聞きしたんですけど、「下村さん3個までなら、保険でできる」。そんな話、後で分かりました。だから、結局、できないだけじゃなくて、できるのものあるんで、ちょっとそういうところもよく調べる必要があるかなと思います。それから「がん」と闘うと、がんと面と向かって対峙する、闘うんじゃなくして、おとなしくさせる。決して負けてるとかそういうことではありません。それから、結局は生活習慣、食事・運動・メンタル、そういう基本的な事も、がんとの治療、大事かなと思います。
最後ですけど、よく恨んだり、「なんで私が?」と落ち込んじゃうという、そういう気持ちはわかるんですけど、それを言ってたら始まりません。私の場合、近くに900年のくすの木あるんですけど、それからもうひとつはお地蔵さん、毎日うろうろ歩き回ります。昼間は暑いから、深夜徘徊します。もう夜になったらゴキブリのように元気出して町中徘徊します。お地蔵さん、必ず3つ4つ手合して「お地蔵さーん、今日も1日生かしてもらってありがとう、明日も良き日でありますように」と。ちゃんと何かは応えてくれるかなーという気がします。
そして、いちばん大事なのは、ご主人が患者の場合は奥さん、それから子どもお孫さん、もう、周りの知人友人に支えられて生きてる。感謝。逆に奥さんが、患者の場合はご主人、そこが一番大事。だから、がんになって、結局夫婦の結束は強まったかなと思います。夫婦ともに非常に優しくなりましたね。これはいちばん素晴らしいことですね。うちのお母さんも非常に優しくなりました。ちょっと怒りますけどね。今日は来てないんで。
残り時間ちょっとはしょっていきます。がんをおとなしくさせる、原因から遠ざかりましょうね。禁酒、禁煙、便通を整える、新鮮な野菜、果物、きのこ、海藻、豆類、ふんだんに食べましょう。果菜類中心に。
それから、がんを育てるものを食べない。乳製品とか、できるだけ肉類はチキンで。魚は基本的に良い。 タンパクはどうしても大豆だけというかね、植物性だけではいけません。それから塩分です、塩はもう制限する。カリウムを多くとる。甘いものは控える。血糖減少を緩やかに。白米、白いご飯食べたいんですけど、できる限り玄米とか。小麦粉でも全粒粉とか。うちパンなんかでも家内そういうの選んできてくれてますけど、ありがたいなと思ってます。油は、オリーブ油とか、サラダ、あまり言われませんけど、人工の油はがんを育てると言います。飽和脂肪酸は避けたほうがいい。一般的に言われるオイル、サラダオイル。それから免疫力アップいうのは、身体をあたためましょう。
今度また会で歩こうね言うてますけど、運動ですね。夏場冬場そうですけど、歩いたら汗びしょびしょなるでしょ。体温を上げましょう。それからお風呂はぬるめ40-41度ですかね、20分。
それから痛みのコントロール。それから十分な睡眠をとる。眠る。昼間、夜寝づらいという方は昼間寝るのもかまわないと思います。逆に14時くらいに15分寝ると、免疫力アップするというデータがあります。それからあとはもう運動です。やれることはやる。それからもう、頑張り過ぎない。大体頑張る人が患者になるわけですから。それから皆さん、やっぱり、来たら楽しいこと、笑顔。常に、がんになったって、笑えるように。「お前、能天気やなあ」いうような感じですけど。笑いましょ!吉本じゃないですけど。だから、落語も結構聞きに行きますよ。ケタケタあほみたいに笑いますよ。家内ときゃっきゃきゃっきゃ笑ってたら、周りの人のひんしゅく買いますけど。
最後終わりますけど、サバイバーになりましょう。これ女性の膵癌の方の場合です。診断時6%という生存率ですが、なんと5年生きますと、その後の生存率は82%になります。だから、1年2年3年へこたれんと残れば残るほどその後の生存率は高くなります。通常生存曲線いうたら、右肩下がりで最後死んでしまうグラフです。ああいうグラフは見ない。こちらのグラフ(逆生存率曲線)でがんばりましょう。皆さん、それを目指してサバイバーとして、1日でも長く生き残りましょう。。特に女性の方は、父ちゃんや男よりはるかにサバイバーです。このグラフには男性出てないでしょ?悔しいですけど、多分男性はないのです。女性の方、どんどん頑張っていただきたい。それから、建築家で有名な安藤先生がこんなこと言うてます。「わしなー、大きい声出すんや。明るく前向きにも考える。」と。先生も十二指腸乳頭癌膵癌で闘病中です。責任もって、仕事、生きがいをもつこと。私の場合も仕事少なくした言っておりますけど、全部きったわけではありません。昨日一昨日人の前で喋って、講習、しゃべっております。やっぱりちょっと生きがい、遣り甲斐をもつこと。
それから医者の言うことは、安藤先生言うてはるんは、よく守って、自分で判断すること。食事は30-40分かけてゆっくり食べるように、運動は1日1万歩以上あるきましょう。生きる力をもつ。あきらめない、これが大事です、ど根性ですけど。大事かなと思います。もうひとり杉浦さんという腎癌の方で、28歳で自分でこのマガジンを出してる方です。ステージ4です。生還者たちが続けた8つ、何かと言ったら、これ、何度も今まで言ってきたこととかぶりますけど、やっぱりそうかなと思います。
ひとつは、がんは死病と思い込むことをやめる、治るんだと思う。それからがん治療以外の人生の目標をもつ。治ったら何する?。それから自分を受け入れる。自分の価値を認める。自分より他人を、他人をとやってきたけど、それはちょっとやめる。忖度をちょっとやめよう。それから発症を生活改善のチャンスと思う、生活習慣見直す。情報に振り回されず、治療法を自分で決める。補完療法等もある。闘病を隠さず他の人に伝える。支えてくれる人に感謝を言葉にする。あえて「死」を受け入れてみる。~若い人は辛い~。
こんなことでやりますと、結構頑張られる方が沢山いらっしゃる。山田総長からお言葉をいただきました。「下村さん、あんたは大丈夫。人は生まれたら必ず死がある。」と。どうですか皆さん、循環器の疾患で、ぽてちんで、うーん死んでしまうか、がんで「おとうちゃーん」言いながら夫婦でまだまだ時間があるって、どっちがいいですかー。で、結局は70代80代となる。結局若い方たちは、いかに50代40代を生きるかが大切。若い方のサポートが大事かなと思います。
最後になりました、昨日の講演ですね、後藤先生という方が「自分のがんについて勉強してね、病状をしっかり把握してね、病状に合う標準治療をしっかり尋ねてくださいね、自分が納得する治療をすすめてくださいね、最初の治療が大事です」と言っておられました。
これを最後に終わらせていただきます。色々喋りましたけども、何かひとつでも参考になったら。明日からやってやろうかとか~。
今日真剣に聞いていただいて大変ありがたい。こういう生活をしております。1日一生明るく元気に前向きに生きたい。長時間聞いていただきありがとうございました。
※編集者コメント
筆者はその後お亡くなりになりました。 合掌