私達がん患者が求める情報とは何でしょうか?
国(厚労省)や医療者が案外気付いていないことがあります。それはがん患者への必要な情報とは、医療情報や医療制度などの情報だと先入観的に思い込んでいることです。
実は私達の会では、入会の時に「同病者に会いたいですか?」と質問をしていますが、95%の人が「会いたい」、「ぜひ会いたい」と答えています。
自分のがん種に関する医療情報(主治医、メディア、WEB,書籍などからの情報)はとても大切な情報ですが、がん患者はそれだけで満足しているわけではありません。
ほとんどのがん患者は、罹患後すぐに「他の人はどうしているのだろうか?」と思っています。つまりがん罹患者は、医療者と同病の経験者の両方からの情報が欲しいのです。
下図はそのようなニーズが存在することを示した図です。
そのような情報が得られる場はどこでしょうか?少なくとも医療機関ではありません。がんの体験者です。それを出来るだけ多くの人から聞こうとしたら、病院内の「がんサロン」や民間の「がん患者会」などの「同病者同士の集まりの場」です。
しかも医療者からの情報というのは、上から下への一方通行の情報です。だから他の人の情報は得られません。それに対して同病者同士の集まりから得られる情報は、双務的です。だからお互いに相手の情報も事細かに聞くことが出来ます。同じ情報でも全く異なるタイプの情報です。
他のがん患者、特に同じがん種のがん患者は「がん」をどのように乗り越えているのだろうか?どう乗り越えたのだろうか?という切実な想いに駆られています。
当会の前身である口腔・咽頭がん患者会時代には、会員が順番に自分の体験を発表することをやっていました。やがて発表者が一巡して体験談の発表がなくなったら、途端に会員の出席率が5分の1以下に下がってしまいました。これは会員の皆さんが如何に他の人の体験を知りたがっていたかということを如実に示していました。
その経験から、当会の定例会では会員同士の交流の場(おしゃべりによる情報交換の場)だけではなく、体験談という「語り」の場が必要だと考えて来ました。そこでは、交流会やサロンなどの短い会話の場では語り尽くせないところを語ってくれます。どんな悩みや不安があり、どんな辛い思いをして、それらをどのように乗り越えて来たのかを語ってくれます。
だから、身近な情報交換やピアサポート(※仲間同士で相互扶助し合うこと。ピアとは仲間の事。)が中心の交流会だけでは皆さんの満足を得られないので、当会では会員の体験談発表の場を設けました。
一方、我々が知りたい医療情報は、主治医からの自分の病気に関する情報や一般に公開された医療情報だけではありません。むしろ治療を支えている医療スタッフの人達が持っている知識や情報も必要です。それらは見えにくい医療情報です。だからこそ情報不足になりがちです。それを補うことを意図して、医療者による講演・講話という場を設けることにしました。
会員の体験談発表と医療者による講演・講話を交互に行うのが第1部の勉強会の趣旨です。ぜひ定例会に出席して多くを学んでいただきたいと思います。